真は小さく息を吸うと、真菜、と優しく呼びかけた。

「俺は真菜の笑顔が大好きだ。拗ねた顔も可愛くて、お客様に見せる笑顔も綺麗で。感動して号泣して、真っ赤に目を腫らす真菜も大好きだ。子どもみたいに無邪気にはしゃいだり、誰よりも真剣に仕事をしたり、そんな真菜の全てが大好きだ。真菜の大事な夢を奪ってごめん。でもその分、俺がこれからどんな真菜の夢も叶えるから。だから一緒にいさせて欲しい」

真菜は、少しうつむいてから、潤んだ瞳で真を見つめた。

「私も、真さんが大好きです。ぶっきらぼうだけど優しくて、言葉は冷たいけど心は温かくて。子ども達に頼まれてカニを取ってあげたり、服が汚れるのなんて気にせず芝生に寝転んで寝ちゃったり。私を抱き締めて守ってくれたり、私の願いを叶えてくれたり…」
「でも、俺、真菜の大事な夢を…」

ううん、と真菜は微笑んで首を振る。

「あんなの、夢なんかじゃない。形なんてどうでもいいんだって、気付いたの。大事なのは、好きな人と過ごす時間。大好きな真さんと過ごす時間が、私の宝物なの」
「真菜…」

真は優しく真菜を抱き締める。

「俺と結婚してくれ、真菜。俺の一生をかけて、幸せにしてみせるから」
「はい」

真菜の目から、涙が溢れ落ちる。
長い指でそっと涙を拭ってくれた真に、真菜は笑いかけた。

「真さん、素敵なプロポーズをありがとう。夢みたいだった」
「夢じゃないよ」

そう言って真は、真菜に優しくキスをした。

身体中に幸せが広がっていくような、しびれるような素敵なキス…

これが私のファーストキスなんだ、と真菜は思った。