「ふっ、なんだ。惚けた面して」


 悠さんが少し馬鹿にしたように言う。


「これ、悠。そんな言い方するでない。圭が驚くのも仕方がない。誰だっていきなりこんな姿を見せられたら驚くものだ」

「俺は驚かなかった」

「それは其方が変わっておるのだ。我の姿を見て驚かなかったのは、後にも先にも其方だけじゃ」


 また僕をおいて二人で会話している。

 と言うかその姿でも話せるんだ。


「圭、其方妖を見るのは初めてか?」


 初めても何も、本当に存在するなんて今日まで知らなかった。
 僕は伊鈴さんの問いに「はい」とだけ答える。


「まあ、普通の人の子なら我ら妖の姿が見えないからな」

「じゃあ、僕はどうして今伊鈴さんのことが見えてるんですか?」

「この場所が少々特殊だからじゃ。だから、其方もこうして我の姿が見えておる」

「そうなんですか……」


 言っていることは理解できる。
 けれど中々受け止めきれないでいると、伊鈴さんが先程の少女の姿に戻る。