それから少しの間沈黙が続く。


「む? なんだ、もしかして悠拗ねてしまったのか? そういうところは昔から変わらなくて愛らしいのう」

「うるさい。って、頭を撫でようとするな」

「そんなこと言って、我に撫でられるのが好きなくせに。もっと素直になったらどうだ? ほれ、撫でさせろ」


 ちらりと二人に視線を向けると、伊鈴さんが楽しそうに悠さんの頭に手を伸ばしていた。
 その手を悠さんは掴む。


「嫌だ。俺だっていい年なんだ。そうやって子供扱いするのはやめろって言ってるだろ」

「そんなこと言われても、いつまでも我にとって悠は可愛い子どもだからなぁ」

「だから、それをやめろって……」


 悠さんは伊鈴さんから顔を逸らす。
 その頬が少し赤くなっている気がする。

 それにしてもこの二人はどういう関係なのだろうか。

 見た目で言ったら悠さんの方が年上に見えるのに、やり取りを見ると伊鈴さんの方が年上かのような態度をしている。まだ十歳くらいの見た目なのに。


「あの、お二人ってどういう関係なんですか?」


 面白そうに悠さんをつついている伊鈴さんに尋ねる。
 伊鈴さんがこちらに顔を向ける。そして少し考えるように目を閉じる。

 伊鈴が無理ならと悠さんを見ると、僕のことを睨んでいたがすぐにそっぽを向かれてしまう。

 なんだか懐かない猫みたいだ。
 そう思うと、睨まれているのもそんなに怖くないかもしれない。

 そんなことを思っていると、伊鈴さんが真剣な表情で僕を見る。