「相原圭(アイハラ ケイ)くんだよね?」


 後ろから声をかけられ振り返る。
 そこには茶色い髪の綺麗な人がいた。

 僕の学校で一二を争う美人だと言われている隣のクラスの織野美優(オリノ ミユ)だ。

 そんな美人がろくに友達すらいない僕になんの用だろうかと不思議に思いながら「そうだけど」と返す。


「よかった。人違いだったらどうしようかと思った」


 彼女は人好きする笑顔を浮かべる。
 美人の笑顔になんだか照れてしまって少し目線を逸らす。


「私ね、前から圭くんのこと前から気になってて、一回話してみたかったの」

「そうなんだ」


 気になっていたと言われたことに驚き、また素っ気なく返してしまう。
 折角話しかけてくれたのに、なんでこんな返ししかできないんだろう。こんなんだから誰とも友達になれないんだ、と軽く自己嫌悪に陥っていると、織野さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。

 急に綺麗な顔が目の前に来て、恥ずかしくなって顔を晒す。


「圭くんどうしたの?」

「ううん、なんでもない」

「そう? なら、いいんだけど」


 織野さんに視線を向けると、彼女はまた笑顔を浮かべる。


「それでね、いきなり付き合うとかは難しいだろうから、まずは友達になれないかなって思って」


 自己嫌悪に陥ったせいで流していたけど、”前から気になっていた”と先程織野さんに言われたことを思い出し顔が赤くなる。