タブレットを操作する。

 慎吾は、今日の施設での出来事が既に様々なSNSに拡散されているのを確認した。

 彼はふ、と艶やかな笑みを浮かべた。しかし、双眸は酷薄だった。
 獰猛に、かつ冷静に相手の喉笛に食らいつき、息の根を止める時の表情。
 里穂や慎里は一生見ないだろう、貌。

 慎吾は宣戦布告する。

「俺のことをたかが青二才だと侮れるのは今のうちだ」

 エスタークのホテル進出の歴史は、そのまま地元との折衝の歴史でもある。

 様々な会議やパーティへ隠岐CEOに帯同している慎吾のことだから、経済界や政界にも知己は多い。
 くわえて彼には前職以前から培ってきた独自のネットワークもある。

 慎吾はチェックして里穂の顔が少しでもアップされているものは各サーバーへ削除を頼んだ。

 反対に、彼女の音声が入っているだけのものや戸黒の顔が写っているものは記録し、様々なアカウントで広めていく。
 それらは多様なインフルエンサーと相互フォローしている。
 政治家の汚職を追っているメディア然り、観光業界然り。……R市が所在している県のオンブズマン然り。

 たちまち、恐ろしい勢いで閲覧数が増えていく。