『どうして遅くなったんだ?』と普通に聞かれたなら、部のみんなと山に行った帰りに飲んでいたと嘘を付くつもりだった。 しかし最初から、当然のように言い当てられてしまい、嘘をつく間もなかった。 たとえついてみたところで、あの兄の様子では、はなから相手にもされないだろう。 そういうわけで野生動物の如く鼻の利く兄だけが、私に彼ができたことを知っているというわけだ。