静かな世界

彼女はそこで、字でいっぱいになったメモを裏返す。

真っ新な紙に戻ったんだ。

何もない、汚れぬままの紙。

『大丈夫だよ、きっと上手くいくよ』

さっきよりも大きな字で書かれたその言葉を見た時、思わず顔を上げてしまった。

違う、と思った。

僕が欲しい言葉をくれていた君だから、こんな言葉は書かないと思っていたのに。

どうしたんだ。

そう欲張っていたら、赤いペンで大きくバッテンがついた。

きれいなバツだ。きれいな赤だ。

『不確かなことを人に言うことはよくない』

だから君はさっきの言葉を書いたのか、と納得した。

『きっと大丈夫?君ならできる?
 明日は来る?
 ううん。違うでしょ。
 そんなのは、明日が来て欲しい人がいうこ
 と。さらに望む人がいうこと。
 もう充分な人はそんなこと言わないよ。』