静かな世界

ねえ、君は誰?

君のことが知りたい。

もっと知りたいよ。

どんな声?どんな性格?

教えてくれよ。なあ。

もう一枚、新しいメモを取り出して、書き始めるのかと思ったら、ペンとメモをこちらに向けてきた。

「なに?書くの?」

左手の前に右手の親指を立ててつけた。

手話だろうか。

「なに?」

な・ま・え

彼女の口は、そう動いた。

「名前?」

林勇矢、と名前を書く。

彼女の触れたペンだと思うとなんだか緊張して、心臓が大きく波打つ。

今度は彼女が名前を書く。

「あか、り…」

竹本明璃。

その名前を見て、思わず声に出したら、
彼女は怪訝そうにこちらをうかがう。

「あっ、いや、いい名前だなと思って」

何を言ってるんだと、自分でも思った。

「えっと、その」

「ふっ、」

え?

明璃がーーー笑った。

とても素敵な笑顔だと思った。

やっぱり君は、美しかった。