小突いたところを今度は撫でる春日さん。



「しなくていいよ。ルイのしたくないことをさせる姉ちゃんじゃないでしょ」

「でも、せっかくチャンスをくれたのに……」

「なはは、花之木姉弟はお互いに気を遣いすぎだな~」



 春日さんの慕われる理由がその光景に詰まっていた。

 ああやって、今まで人を助けてきたのだろう。



「ルイが無理すんのは、ルカが一番やってほしくないことだと思うけどね」



 ほしい言葉をほしいときにくれることが救われる方法なのも、春日さんは知っているのだ。

 ルイくんの話を聞く春日さんをぼんやり眺める。


 なんだか……遠い、な。

 わたしは大勢いる中の、春日さんに救われた内の一人でしかなくて。

 欲を膨らませたとしても、良いことなんてない……。


 泣きじゃくるルイくんをなだめる春日さんを見て思うことが、──最初に声をかけてくれるのはわたしがよかった、なんて。

 彼に出会わなければ、こんな醜い自分、生まれずに済んだ。



「──あとね、ルイ」



 春日さんの声色が変わり、ピンと空気が張り詰める。