「そう、なん、ですか」

「伝言を預かっております。『一人で外に出ることはないように』とのことです。何かあれば、私にお願いします」

「……はい」

「それから、これを」



 差し出された、光峰さんの手のひらに収まるくらい小さな箱。

 なんだろう……?

 開かれた中に、光るものが見えた。



「肌身離さず付けていてほしいと」



 輪のてっぺんに、透き通った石が埋まっている。

 これ……、指輪だ。



「……いいんですか?」

「どうぞ」



 そっと受け取った。

 春日さんからの贈り物。……嬉しくないわけがない。



「ありがとうございます」



 早く帰ってこないかな。

 春日さんにもお礼を言いたい。



「では、それだけです」

「あ……光峰さん」



 踵を返すその背中に声をかける。



「はい?」

「今日、何かわたしにできることはありますか?」



 いつも春日さんに誘われてボードゲームをしていたから、今日は相手がいない。

 本を読むにしても、家主がいないのに借りるのはまだ少し気を遣う。