我ながら酷い言い訳。

 必死で建前を取り繕う自分にチクチクと胸が痛む。


 春日さんは、《心理》を受け入れてくれそうな様子だった。

 《心理》が同じ気持ちになってくれれば、わざわざ危険を侵さなくてもいい。

 わたしはそれが、一番平和な解決方法なんじゃないかって考えている。



「本気で言ってる?」



 静かな怒りを含んだ《心理》の声。

 体を起こしてこちらを振り返ったときの表情も、同じ。



「《支配》は騙されてる」

「えっ……」

「研究所のときだってそう。《支配》なら簡単に言うことを聞くから、良いように使われてるだけ」



 そんなはずない。

 だって春日さんは、わたしに居場所をくれて。



「《支配》が住んでたあの家……南蜘蛛 春日の家なんだろ」



 ……南蜘蛛?

 え? それが春日さんの名字?

 街の名前で、街を管理してる権力者一家の名前の、南蜘蛛?


 ────南蜘蛛家にとって、私達は街作りゲームの駒でしかありません。


 確か、光峰さんが、そう言っていたけれど。

 春日さんはそんな人じゃない……。