「そうか。《支配》に命はかけられないか。その程度の気持ちというわけだ」

「……俺は兄とは違います」

「知っている。だから普通のロシアンルーレットをしようと言っているのだろう? 普通のキミに合わせて」

「……、」



 天鳳はニヒルに笑う。

 平凡な人間に向ける落胆、が含まれていた。


 何度も何度も、飽きるほど浴びせられてきた表情。

 自分が空虚に吸い込まれていく感覚。


 俺だけの命じゃないのだ。

 負けたら、りんだっていなくなる。どう考えても本末転倒だろう。

 丸く収めるなら、俺が退くしかない。

 退いて、百鬼会にりんを取られるしか。



 ────春日さんが、自分のことを過小評価しすぎなんじゃないですか……?



 こんなときに彼女の言葉を思い出すなんて……俺も大馬鹿者だ。


 わかっていた。俺ができないんじゃない、彼らができすぎるのだ。

 でも、あんなのがずっと近くにいてみてよ。自分が惨めに見えてくるでしょ。カスだと思えてくるでしょ。


 名前を呼ばれたくらいで喜ぶ純粋な子が──眩しくなってもいいでしょ。



「さあ、先攻はキミだ。ゲームを始めよう、南蜘蛛様」



 俺は銃を手に取った。

 命をかけたいと思えるくらい、彼女を自分のものにしたかった。