「今夜は一緒に寝よっか」



 帰ってから言われたことには何も返事しないまま、シャワーを浴び終えてから部屋を訪ねた。

 「おいで」と広げられた腕にふらふら近付き、二人でベッドになだれ込む。

 春日さんの腕の中に、強すぎるくらい閉じ込められた。

 わたしも同じようにぎゅっと返す。



「りん」

「……はい」


「死ぬまで俺といられる?」



 彼の声色に本気が宿っていた。

 春日さんはわたしと一緒にいる覚悟があるんだ……。



「残念だけど、ここからはもう出られない。狭いコミュニティの中で、いつ死ぬかわからない恐怖を感じながら生きていくしかない」

「そんなのは、……外も変わりませんよ」

「でも、より身近で目の当たりにしやすいよ。俺の近くは一番安全だけど、窮屈を感じるときが来るかもしれない」



 それはつまり、自由のために身を危険に晒すか、制限の中で安心を得るか、どちらかだと。

 わたしの自由をまだ考えてくれているということだった。

 申し訳なさと愛しさで、きゅうっと胸が締まる。



「春日さんは、迷惑じゃないですか……?」



 わたしのせいで、春日さんに害が及ぶなら……嫌だ。