やけくそで返事をする私を、聖司くんは引っ張っていく。

聖司くんの広い背中と、男の子らしいあったかい手。

その上に瞬く、こぼれ落ちてきそうなほどの星々。

いつものように互いに悪態をつきながら歩いていく。



……やっぱりなんか、くすぐったいし

胸が、変。





「……ねぇ聖司くん」


「はい?」


「どうして執事になろうと思ったの?」


──……うちの学校は代々執事の家系の息子や、尽くすことが好きだからという理由で執事学科に入る生徒が多い。

聖司くんはとてもじゃないけど仕えることが好きな人には見えないし、いつも評価にこだわってるけど…名誉やお金に執着があるようにも見えない。


「なにか理由があるんでしょ…?」


今まで気にはなっていたけど、直接問いただしたことはなかった質問。

聖司くんは、歩みは止めずに押し黙る。


「……」


また暖かい風が吹いた。

聖司くんのサラサラな黒髪と、白いTシャツが揺れて、木々の葉達の擦れる音がする。

聖司くんはそれを全身で感じるように上を向いて息を吸って、吐くと、小さく言った。


「……秘密です」