「女の子らしさって言うの? が,大好きなの。なのに,男だなんだって……終いにはチョロそう?! もう,ほんっと信じらんない!」



悲しみを上塗る勢いで,怒りが込み上げる。



「彼氏なんていたこともない! 簡単にOKするような女じゃない! 寧ろ,きっと誰より恋愛脳で,めんどくさいの私は! 1度くらい,告白だってされてみたい!」



全て吐ききると,なんだかすっきりした。

そんな情けない叫びも,グラウンドの喧騒に全て掻き消されされて。

十和しか聞いてないと,だけど十和が聞いているんだと思うと,心底安心できる。

……よし。



「私,もう行くよ。ありがとね,十和」

「何が?」

「聞いてくれて,だよ。今のことは,誰にも内緒ね」



しーっと,人差し指を口に当てて,いーっと開く。

十和は眠そうな顔でそれを見つめて,やっぱり何を考えているのかは分からない。



「あっそう言えば……! 何組なのか知らないけど,また会ったら! じゃーねっ」



これでおしまいと言うには味気ない。

すれ違った時位,無視しないでねと意味を込めて,私は振り返った。



「うん,またね……センパイ」



大声をあげなくても,良く通る落ち着いた声。

それを背に駆け出した私は……

50m程少し走って,今度こそ頭からではなく,膝から崩れ落ちた。

ガクンと,それはもう見事に。

……後輩,かい!!

通りで見たことないと思ったと,私は頭をかかえる。

その姿さえも,十和は眺めて笑っている気がした。