君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

伝言を聞いた瞬間、あの恐ろしい顔はどこへやら、
ルイーザは満面の笑みを浮かべる。

「何ですって?陛下からですって?間違いないの?今夜こちらに来ると!」
ルイーザの圧に押されて、侍女は思わず後ずさりしてしまう。
「陛下付きの侍従から言付かりましたので、間違いございません。」

「まぁ、どうしましょう。陛下に失礼のないように準備しなければ。あなたたち、すぐにこの部屋を片付けなさい。ベッドシーツも全部変えること。それからとっておきの夜着を着なくっちゃ。香水をたっぷり染み込ませてね。それからお父様にいただいた高級な葡萄酒も用意して。」
侍女たちは急に機嫌の良くなったルイーザの気が変わらないように大急ぎで指示に従う。

ルイーザが側室となって1年余り、ユリウスが夜にやって来ること一度もはなかった。
結婚したその日でさえ。
自分に自信があったルイーザには屈辱的だったが、
さすがに国王には指図できない。
それにユリウスも自分もまだ若く、
そんなに焦る必要はないと自分を納得させていた。

しかし状況は変わろうとしている。
隣の国からのこのこと王妃が嫁いでくるのだ。
もしその女が自分より早くユリウスの子を、しかも王子を身ごもったら。
ルイーザは正気でいられる自信がなかった。
(何が何でも第一王子は私が産む。そして王太后の座を手にするの。)
焦り始めていたところに、ユリウスからのこの伝言である。
有頂天にならないはずがなかった。