君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

だから王妃決定の知らせを受けたときは人生最大の絶望だった。
しかもその婚姻を主導したのが自分の父親だというから二重のショックだった。
あんなに自分を甘やかしてくれた父親が、自分を不幸にする仕打ちをするなんて、
ルイーザには信じられなかったのだ。
怒りの感情をコントロールできず、
泣いて叫んで大暴れしたが結果は変わらず。
最後には生まれて初めて父親に怒鳴られるというおまけまでついた。

「許さないわよ、あの女。必ず地獄に追い落としてやる。」
ルイーザの中で怒りが憎しみへと変化していた。

そんなルイーザだから、明日が憂鬱で仕方なかった。
でもこれを欠席すると、負けを認めたようなもの。
噂好きの貴族たちにどんなことを言われるかと思うと、出ないわけにはいかなかった。
幸い父親の威光で、マグノリアの主だった貴族の令嬢はルイーザの取り巻きだ。
（せいぜいいびり倒してやろうじゃないの。）
最近のルイーザはギーゼラをどうやって苦しめてやろうかそればかり考えていた。

ぶつぶつと怖い顔をして独り言を呟くルイーザに侍女が声をかける。
「あ、あのルイーザ様。」
「何か用？」
「陛下からの伝言で、今夜夕食後にそちらに伺うと。」