君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

ジゼルがアフタヌーンティーを楽しんでいた頃、
ルイーザの居室は最悪の空気が流れていた。。

もうこれで何枚目になるのだろう。
割れた皿やグラスが散乱していて、片付ける侍女の手は血だらけだ。
「ルイーザ様、これ以上割られては食器が無くなってしまいます。」
涙声で侍女が告げると、ルイーザはその侍女を睨みつける。
「あなた、誰に口をきいているの？私に指図しないでちょうだい。だいたい、安物だからすぐに割れるんでしょ。」
（あーイライラする。この私がどうして側室なんていう２番手に甘んじなきゃいけないの。ギーゼラとかいう女、この国から追い出してやるわ。）
王妃が来ると知ったあの日から、ルイーザはジゼルを敵視していた。

ルイーザは美しい娘だった。
シュヴァルツ公は娘の生まれついての美貌に大変喜び、王妃とするべくそれにふさわしい養育をした。
その結果、ルイーザは気位が高く、高慢ちきな性格になってしまった。
「お前は王妃になるんだ」と暗示のように言い聞かされて育ったルイーザは
その未来を何も疑うことはなかったし、
見目麗しいユリウスに一目惚れしてからは、その暗示が自分の意志に変わった。
だからユリウスから縁談を断られたことは予想外だった。
「なんで？」「どうして？」ルイーザは自問自答を繰り返した。
ここまで来て引き下がれなかったルイーザは父親に泣きついて、
なんとか側室の地位に納まり、
その他の側室候補を徹底的に排除することで
その自尊心をなんとか保たせていたのだった。