君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

「カサブランカには何か特別な意味でもあるの？」
ジゼルが尋ねると、ソフィアが言いにくそうに口を開いた。
「ピンクのカサブランカはルイーザ様という方のモチーフなのです。」
「ルイーザ様？（ユリウス様の妹か親戚かしら？）」

「ギーゼラ様、いつかは言わねばならないことですので今申し上げておきます。マグノリア王国では側室が認められており、ユリウス国王陛下にも一人おられます。それがこのルイーザ様なのです。」
「そうなの・・・」
ジゼルの心がチクっと傷んだ。
「ルイーザ様のご実家のシュヴァルツ公爵家は我が国でも最も力の強い公爵家で、陛下も渋々側室に受け入れられました。ですのでお二人が仲睦まじいわけではございません。実際御子もおりませんし、そこはご安心ください。ただルイーザ様ご自身が大変気位の高いお方で、宮廷中が手を焼いております。ギーゼラ様に何か仕掛けてくるかもしれませんので、ルイーザ様を刺激するようなことは慎んだ方が賢明かと思います。」
「どこの宮廷でも平穏な暮らしというのは難しいものなのね。」
「必要以上に謙遜する必要はございません。明日からはギーゼラ様が我が国最高のご身分の女性となるのですから。」

「さぁさぁ、ギーゼラ様。ギーゼラ様に悲しい顔は似合いません。甘いものを食べて元気を出しましょうね！」
ジゼルを元気づけるために、ソフィアとエミリアがお茶の用意を持ってきてくれていた。
（エミリアの明るさにはいつも励まされるわ。）
ジゼルはニコッリ笑って立ち上がると、優しい侍女たちとアフタヌーンティーを楽しんだ。