君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

「陛下、ユーフォルビアは我々の申し出に大賛成でしたぞ。あのぽっと出の成金国はあちらにとっても目の上のたんこぶだったようです。こちらがユーフォルビアからの正式な回答になります。」
シュヴァルツ公はユーフォルビア王家の紋章の封蝋で綴じられた書簡を差し出す。
「同盟の印として陛下との婚姻を打診したところ、ちょうど釣り合いの取れる年頃の娘がいるとかで、話を進めてほしいとのことです。」

「あい、分かった。」
シュヴァルツ公の報告に、ユリウスは短く返事をする。
できればユーフォルビアが拒否してくれたら丸く収まったのに、こうなっては仕方ない。
ユリウスも腹を括り、ユーフォルビア王国に正式な外交官を差し向けこの同盟を成立させたのだった。

しかし、そんな国の事情などお構いなしなのがルイーザである。
なんとか側室になったはいいもの、ユリウスにまるで相手にされないことに常々不満を抱えていたルイーザは、
国王が王妃を迎えることが決まったと知って、怒り大爆発。
周囲の物や人に当たり散らし、大暴れしていた。
シュヴァルツ公も最初は優しく宥めていたものの、
ついに堪忍袋の緒が切れて娘に雷を落とした。

ルイーザも普段は自分に甘い父親の本気の怒りに触れ、ようやく大人しくなったものの、
それ以降、「王妃」や「ユーフォルビア」という言葉を聞くたびにあからさまに不機嫌になるので、
周囲がびくびくしているとルイーザ付きの女官から報告があった。
「婚姻式の前にルイーザと話をしなければ。」
めんどくさい仕事が増えたと項垂れるユリウスであった。