君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

ではなぜ、ユーフォルビアから王女を迎えることができたのか。
これには他ならぬシュヴァルツ公の思惑が絡んでいた。

マグノリア王国は国土の北側が海に面している。
しかし潮の流れが非常に速いうえに、冬には流氷もやってくるため、北側に港をつくることが出来ない。
そのため他国との貿易は陸路で行うしかなかった。
昔はそれで良かったのだが、現在は各国の航海技術の発達により貿易は海を介して行うことが一般的で、
港を持たないマグノリア王国は不利にな状況が続いていた。

そこでシュヴァルツ公が目をつけたのが隣国のウィステリア王国である。
コルヌ半島をはさんで向かい側にあるこの国は、半島が急激な潮の流れを受け止めてくれるため、
潮の流れが緩やかでいくつもの港町がある。
国家としても優れた造船技術を持っているため、新興国ではあるが世界有数の貿易大国として発展していた。
この港町を手に入れるために、
シュヴァルツ公はコルヌ半島を越えてウィステリア王国を侵略することを主張しているのだ。