君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

ルイーザ問題はすっかり失念していた。
ルイーザ・フォン・シュヴァルツ。北部の鉱山地帯を所有するシュヴァルツ公爵家の娘。
鉱山資源はマグノリア王国の経済基盤を支えており、それを管理するシュヴァルツ公の権力は強大で、
ユリウスですら無下にすることができない。

シュヴァルツ公からはあの手この手でルイーザを王妃にとの打診があったが、
”マグノリア王国は王妃は他国から迎えるのが伝統だ”ということを理由になんとか退けてきた。
それでもしつこく食い下がるので、側室になることを認めたのだ。
「これで少しは大人しくなるだろう。」
そう思ったユリウスの読みは甘く、
自分より上の立場の王妃がいないことをいいことに、さながら自分が王妃かのように振る舞っている。
王宮勤めの女官たちを虐めるのは日常茶飯事、ルイーザのせいで辞めてしまった侍女は数えたらきりがない。
側室入りを狙っている令嬢の噂を聞けば、その令嬢を徹底的に追い込むという専らの噂だ。
かと言って、ルイーザの後ろにはシュヴァルツ公がいるため、
様々な利権が絡んで誰も彼女を咎められない。
まさに野放し状態である。