「さてさて、お話をしていたらあっという間ですね。こちらで陛下がお待ちになっています。さぁ、参りましょう。」
シュトラウスがにこやかにそう告げると、重々しい扉がギギッと音を立てて開かれた。
敷き詰められた赤い絨毯の先には一人の男性が玉座に座っている。
慣れないドレスにつんのめることが無いよう、
最新の注意を足先に向けながら歩いて行き、
玉座の前で淑女の礼をとる。
「お初にお目にかかります、ユリウス国王陛下。ユーフォルビア王国よりやってまいりましたジゼル・ド・ウルフェニーと申します。私のことはどうぞギーゼラとお呼びください。末永くよろしくお願いいたします。」
「長旅ご苦労であった、ギーゼラ殿。さぁ、顔を上げてください。私たちは夫婦となるのだから、今後そのような堅苦しい態度は不要です。」
「お心遣いありがとうございます。」
ユリウスに促され、おずおずと顔を上げたジゼルはユリウスの顔にくぎ付けになった。
(私、この方を知っている・・・)
ユリウスは左右の目の色が違うオッドアイで、右がグリーン、左がグレーの色をしていた。
小さい頃、グリシーヌ宮に迷い込んできた男の子と全く同じ目だ。
何を話したのかまでは覚えていないが、
左右の目の色が異なる美しい男の子のことは記憶に残っていた。
(あの時、ばあやに「神話に出てくるアドニスに出会ったの!」って言ってずいぶん呆れられたな。)
辛いことの方が多かったジゼルにとって、数少ない美しい思い出だ。
シュトラウスがにこやかにそう告げると、重々しい扉がギギッと音を立てて開かれた。
敷き詰められた赤い絨毯の先には一人の男性が玉座に座っている。
慣れないドレスにつんのめることが無いよう、
最新の注意を足先に向けながら歩いて行き、
玉座の前で淑女の礼をとる。
「お初にお目にかかります、ユリウス国王陛下。ユーフォルビア王国よりやってまいりましたジゼル・ド・ウルフェニーと申します。私のことはどうぞギーゼラとお呼びください。末永くよろしくお願いいたします。」
「長旅ご苦労であった、ギーゼラ殿。さぁ、顔を上げてください。私たちは夫婦となるのだから、今後そのような堅苦しい態度は不要です。」
「お心遣いありがとうございます。」
ユリウスに促され、おずおずと顔を上げたジゼルはユリウスの顔にくぎ付けになった。
(私、この方を知っている・・・)
ユリウスは左右の目の色が違うオッドアイで、右がグリーン、左がグレーの色をしていた。
小さい頃、グリシーヌ宮に迷い込んできた男の子と全く同じ目だ。
何を話したのかまでは覚えていないが、
左右の目の色が異なる美しい男の子のことは記憶に残っていた。
(あの時、ばあやに「神話に出てくるアドニスに出会ったの!」って言ってずいぶん呆れられたな。)
辛いことの方が多かったジゼルにとって、数少ない美しい思い出だ。



