君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

「国王陛下にお会いする前に軽食をお召し上がりください。」
ハンナがパンやジュースなどの軽食を載せたワゴンを持ってきてくれた。
「ギーゼラ様の好みが分からなかったので、厨房にあるだけお持ちしてしまいました。どれを召し上がられます?」
「レーズン入りのクルミパンに冷たいオレンジジュースが飲みたいわ。」
「かしこまりました。」
手際よくテーブルを準備していくハンナの横で、
ソフィアが着付けを、エミリアが髪の毛をセットしてくれている。
予めリハーサルをしていたかのような見事な連係プレーだ。

「ギーゼラ様の髪は1本1本がしっかりしていてとっても結いやすいです。私なんか髪の毛が細いので傷むとすぐ切れてしまうし、ヘアアレンジもあまりできないんです。」
「そうかしら。自分の髪のことなんてあんまり考えたことがなかったわ。」
そう言いながら、ジゼルはズキンと胸が痛む。本当は自分の主人が赤毛だと知ったらエミリアはどう思うだろうか。
「私、昔から妹たちの髪をアレンジするのが得意で、小さい頃の夢は美容師だったんです!自分のご主人様がこんな豊かな御髪をお持ちで感激しております。陛下も思わず見惚れるほどのヘアスタイルにしてさし上げますからねっ!」
「こら、エミリア。口より先に手を動かしなさい。ギーゼラ様。お召しになるドレスはこちらでよろしいですか?ギーゼラ様の瞳にあうオリーブグリーンのドレスですが・・・」
おしゃべりの止まらないエミリアを注意しつつ、ソフィアはギーゼラにドレスの確認をする。
オリーブグリーンの布地で胸元には金糸で小花が刺繍されている。
ジゼルの実家の家名ウルフェニーを連想させるドレスだ。
「とても素敵。ありがとう。」
ジゼルの承諾を得て、ソフィアも流れるような手つきでドレスを着せ替えてくれた。