君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

馬車は正門前で停車し、先導していたロートシルトが扉を開ける。
「長旅お疲れさまでございました、ギーゼラ様。」
ロートシルトがさし出してくれた手に恐るおそる自分の手を重ね、
深呼吸して馬車を降りると、
目の前には悠然とそびえたつ要塞のような城があった。

「ギーゼラ様、ようこそお越しくださいました。」
声のする方に目を向けると、
やや小柄ながら、優しそうな笑みを向ける年配の男性が近づいてきていた。
笑みを浮かべる顔には深い皺が刻まれている。
「私はヨーゼフ・フォン・シュトラウス。陛下の元で宰相を務めております。マグノリア王国一同、心から歓迎いたします。」
シュトラウスは恭しく礼をすると、ジゼルの左手に口づけた。
「お出迎えに感謝いたします、シュトラウス殿。今後ともよろしくお願いいたします。」
「ギーゼラ様も長旅でお疲れでしょうから、貴賓室へご案内いたします。そこでギーゼラ様にお仕えする侍女たちを紹介いたしますね。」
「陛下にはいつご挨拶すればよいでしょうか?」
「昼過ぎに陛下との謁見の時間を用意しております。それまでゆっくり身体をやすめられよ、との仰せです。時間になりましたら私がお迎えに上がりますので。」
「ご配慮いただきありがとうございます。」
マグノリア王国初代国王の彫像が飾られた正門玄関を抜けて、
見事な調度品で設えられた貴賓室に通される。