君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

ガタン、ゴトン
ガタン、ゴトン。。。

馬車に揺られながら、ジゼルはうつらうつらとしていた。
「ギーゼラ様、お目覚めになってください。もう少しで王城に到着します。」
クララがキビキビとした声でジゼルを起こす。
「はっ、ごめんなさい。もう到着するの。長かったけどいよいよなのね。」
「王城はこの坂を上った丘の上にございます。坂道で少し揺れますが、ご辛抱ください。」
「これぐらい大丈夫よ。」

馬車の揺れなど気にならないくらい、ジゼルは緊張していた。
ユリウス国王はジゼルより4つ年上の21歳の青年だと聞く。
若い男性で知り合いと言えばアランくらいで、
彼は物心つく前からの幼馴染なうえにマルゴの孫なのだ。
家族も同然である。
ユリウスとどんな話をしたらいいのか、さっぱり分からない。
「あの、クララ。」
「何でしょう、ギーゼラ様。」
「ユリウス国王陛下は趣味とか好きなものとかあるのかしら?」
「陛下ですか?そうですね・・・仕事一筋という感じで、趣味があるというようなお話は一度も聞いたことがございません。早朝に騎士団に顔を出されて朝練に参加されることもございますので、身体を動かすのはお好きなようですね。」
「そうなの・・・(あんまり参考にはならなかったわ)」
「陛下のことが気になるのですか?」
「そうなの。もうすぐお会いすると思うと、急にいろいろ気になってしまって。」
「陛下は少々気難しい方ですが、誠実な方です。ギーゼラ様のことも大切にしてくださるでしょう。」
「そうだといいわね。」

馬車はゆるやかに丘を駆け上がり、ほどなくして王城に到着した。