「王太子のジジへの執着は凄まじいな。」
見送りの際のエドワードを思い出してユリウスが苦笑する。
「決して悪い子ではないんですけど・・・」
エドワードの自分への執着ぶりにはジゼルも苦笑いするしかなかった。
彼は将来のウィステリア国王だ。
王国の未来のためにも、彼は妻を娶って世継ぎを誕生させる使命がある。
（あの子もちゃんと女の子と恋をして、結婚することができるのかしら？）

今朝の約束通りに散歩に連れ出してくれたユリウスは、
王城内だけではなく、周辺もくまなく案内してくれた。
かつては自分の生活圏内しか知らなかったので、
こんなに巨大な城だったのかと驚いてしまった。
そして散歩の最後に、自分たちの居住スペースに設けた中庭にジゼルを連れて行く。
昨日はもうすっかり暗くなっていたため中庭がどうなっているのかよく見えなかったが、
よく手入れされた草花で彩られた美しい庭園となっている。
「あれを見てほしい。私からジジへのプレゼントだ。」
そう言ってユリウスが指示した方に目を向けたジゼルは、
途端に頬を紅潮させて驚きの声をあげる。

ユリウスが指さした先には
こじんまりとしたガゼボがあり、
見事に咲いた美しい藤の花が生い茂っている。
「私の生まれ故郷の・・・グリシーヌ宮とそっくりだわ。わざわざ作ってくださったのですか？」
「どういう庭にしようかと考えた時、真っ先にあの藤棚を再現することを思いついたんだ。ジジと出会った特別な場所だからね。」
「とても嬉しいわ。最高のプレゼントです。」