君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

2回目であったとしても、
ウェディングドレスは特別なドレスだと思う。
上質なシルクでつくられた純白のドレスの美しさは格別だ。

ドレスの打ち合わせの時、
実質的には2回目の結婚だから
ヴェールも無しで色もオフホワイトがいいのではジゼルは思っていたが、
その意見はウィリアムに一蹴された。
曰く、「私は娘を一度として嫁に出していない。」

ジゼルのウェディングドレスはマグノリアの一流デザイナーの手で仕立て上げられたが、
アリスの希望で「サムシング・フォー」が取り入れらている。
サムシング・フォーとはウィステリアの花嫁の伝統で、
4つの何かを取り入れることで花嫁が幸せになるというジンクスだ。

まず一つ目の「サムシング・オールド」。
何か古いもの。
これはウィステリア王家の家宝でもある別名『乙女の涙』と呼ばれるティアラにした。
ティアラに使われているダイヤモンドが涙のしずくのようなカットになっていることからそう呼ばれている。

二つ目は「サムシング・ニュー」。
何か新しいもの。
繊細な刺繍が施されたヴェールがそれだ。
実はこのヴェールはかつてジゼルが裁縫の技術を教えた孤児院で作られている。
ジゼルがいなくなった後も、お姉さんから妹たちへと裁縫の技術は受け継がれていて、
今回の結婚式で何か役に立ちたいと制作を買って出てくれたのだった。

三つめは「サムシング・ボロード」。
何か借りたもの。
ジゼルの耳に輝く美しい真珠のピアスは、ユリウスの亡き母の宝石コレクションから拝借したものだ。

そして最後が「サムシング・ブルー」。
何か青いもの。
アリス曰く、「さりげなく取り入れる」のが基本だそうで、
ジゼルはブーケの花材として白いカスミソウをセレクトしていたが、
その中に青いカスミソウも少しだけ入れてもらっている。