君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

「それなら、護衛ではなく、私の友人になってくださらない?」
ジゼルの提案にクララは一瞬きょとんした顔をしたが、すぐに謙遜する。
「私なんかが、ギーゼラ様の友人だなんて畏れ多いことです。滅相もございません。」
「あら、どうして?」
「ギーゼラ様は明日からは王妃様なんですよ。伯爵夫人の私なんかとは身分が違います。」
ウィステリアの環境にすっかり慣れていたジゼルは、
マグノリアの階級社会のややこしさをすっかり忘れていた。

「私は身分なんて気にしないわ。私はあなたのことが大好きで、仲良くなりたい。それにね、私とっても乗馬の腕が上達したから、一緒に遠乗りに出かけてくれる人を探しているの。そんな私だから、お茶会で根拠のない噂話に興じている令嬢とは趣味が合わないと思うのよ。」
「これはこれは見かけによらず、我らの王妃様は相当お転婆のようで。護衛には乗馬の得意なものを選抜しないといけませんね。クララ、王妃様の乗馬友達なんて滅多になれるものじゃないぞ。光栄なことじゃないか。」
「今度早速お誘いの手紙を出すわね。私の愛馬は青鹿毛のチャーミングな男の子なの。クララにも紹介したいわ。」
クララはジゼルが乗馬好きでいてくれたことが意外だった。
あの事故の後、ジゼルは馬と触れ合うことを辞めていたのでもうそれっきりになってしまったと思っていたからだ。
「乗馬の師匠として、ギーゼラ様のご趣味に喜んでお付き合いさせていただきますわ。」