君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

「そういえば、クララは元気にしている？」
かつて自分の護衛を務めてくれていたクララの姿が見えないことが気になり、
何気なく質問する。

するとハンナたちは3人で顔を見合わせるので、
ジゼルはクララに何かあったのかと思わず不安になる。
「クララは実は軍を除隊しておりまして・・・」
「どうして？何か大変な怪我でもしてしまったの？」
「いえいえ、そういうことではございません。クララは元気にしていますよ。」
思わず立ち上がったジゼルをハンナが慌ててなだめる。

「クララはロートシルト少将と結婚して、ロートシルト伯爵夫人となったのです。」
ソフィアがハンナの後を続ける。
「クララの父上は軍隊内で陛下に次ぐ大将の地位にありますし、夫も軍の上級幹部となると、結婚後も軍に留まるのは難しかったんじゃないでしょうか。」
（そうなのね、クララも結婚しているのね。しかもロートシルト殿と。）
クララの恋心を知っていたジゼルは、吉報を聞いてついつい嬉しくなる。
「今夜の陛下主催のパーティーのゲストにロートシルト伯爵夫妻の名前もありましたから、夜に会えると思いますよ。」

結婚式を明日に控えた今夜は
ユリウス主宰でウィステリア王家の歓迎パーティーが催され、
王族と関わりの深いゲストが招待されている。
ロートシルトはユリウスと旧知の仲だから、招待されるのも当然だろう。
久しぶりにクララに会えると聞いてジゼルは俄然パーティーが楽しみになった。