君の愛に酔う～藤の下で出会った2人の物語～

「貴女が赤毛のまま嫁いで来てくれたら、藤の花の女の子だと気づけたのにな。」
ユリウスがポツリと漏らす。
「マグノリアでは赤毛は好まれないと聞いて、隠さなければと思ったんです。」
「あの時はまだ偏見も強かったから、貴女がそう思ってしまうのも無理はない。でも小さいときの貴女はその赤毛を誇りに思っていたようだが。」
「あの頃は外の世界を知らなかったんです。大好きなお母様と同じ髪がただただ嬉しかったんです。」

ユリウスはジゼルの赤毛に手を伸ばし、愛おしそうに撫でる。
「誰が何と言おうと、ジゼルの髪は美しい。あの時貴女が言ったように、まるで太陽のようだ。」
ユリウスの言葉にジゼルは嬉しくなる。
「私は陛下にお会いした時にすぐに気づきましたよ。宝石のように美しい瞳はあの時のアドニス様だって。」
「アドニス・・・？」
ユリウスのことを勝手に読んでいた名前を思わず口走ってしまい、ユリウスに聞き返されてしまう。
「あの時の陛下がとても美しい少年でいらしたので、神話に出てくるアドニス様みたいだと思って。その時はお名前を知らなかったから、そう呼んでいたの。」
（私の馬鹿～こんな恥ずかしいことを陛下に知られてしまうなんて。）
「私がアドニスなら、貴女はアプロディーテだな。まぁ、私は1年の2/3しか貴女に逢えないなんて、とてもじゃないが我慢できそうにないが。」