君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

ユリウスとジゼルは周囲を生垣に囲まれたベンチに腰を掛けた。
「国王陛下にご招待いただいて参加したんだ。」
しばしの沈黙を破ったのはユリウスだ。
「そうでしたか。」
「あなたに逢えないまま終わってしまったらどうしようかと思ったが、無事に逢えて良かった。」
マスクで表情は見えないが、ユリウスの声は今まで聞いた中で一番優しい声だった。

「あなたにずっと謝りたいと思ってたんだ。あなたがマグノリアにいた頃、夫としてあなたを守ってやることが出来ず、ずいぶんと辛い思いをさせてしまった。本当に申し訳ない。」
「もう終わったことですから、いつまでもそのように謝るのは辞めてください。それに私、陛下には感謝していることもあるんですよ。」
「私は何かあなたに感謝されるようなことをしただろうか?」
「陛下はいつも私の希望を尊重してくださいました。馬にも乗せてくださいましたし、孤児院での慈善活動も許可してくださったんですもの。」
「そうか。そんなこともあったな。」
それからジゼルとユリウスは、ジゼルがマグノリアにいた時の思い出話をした。
ハンナやクララたちが今も元気に王城で働いていることを、ジゼルはとても嬉しく思った。