君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

(ちょっと外に出て、夜風にあたりましょう。)
会場のムンムンとした熱気に少しのぼせてしまったジゼルは
ゲスト達にも開放されている中庭に出ることにした。

ダンスホールも人で賑わっていたのに、
中庭にも結構な人がいる。
中庭に設置されたベンチやちょっと陰になっているところで、
カップルたちが愛を囁きあっている。

もともとカップルだったのか、
一夜の出会いで盛り上がっているのか、
ジゼルにはよく分からなかったが、
男女がイチャイチャしているところをこんなに公然と見るのは初めてだったので、
ジゼルの方が恥ずかしくなってきてしまった。
(ちょっと場違いなところに来てしまったかしら。)
そう思って、もっと人通りの少ないところに行こうと小走りで歩いていると、
ジゼルはまたまた後ろから手を掴まれた。

「Endlich habe ich meiner lieber Katze finden.(私の愛する猫をやっと見つけた)」
突然聞こえてきたマグノリア語に思わず振り返る。
その男性の真っ黒な仮面の右頬には、サラマンダーの装飾があった。
それにこの声色は、以前ジゼルが何度も聞いたことのあるものだ。
思いもしなかった男性の登場に、ジゼルの目は真ん丸になる。
「あなたは・・・!どうしてここにいらっしゃるの?」