「ユリウス国王はどうかな?私の要求を受け入れてくれるよね?」
優しく聞いてくれている風で、その実は逆だ。
反論は許さないというウィリアムの眼差しを受けて、ユリウスは受け入れるしかなかった。
「ウィリアム国王陛下の仰せの通りに。」
「私の要求を認めてくれてありがとう。私からは以上だが、女帝陛下はなにかございますか?」

「当たり前じゃないの。」
ウィルヘルミーナが食い気味に返答する。
「王位も風前の灯火のユーフォルビアから、ヴァランタン侯爵の農園をそっくりそのままいただくよ。」
「なんだと⁉」
ベルナール国王が声を荒げるのも無理はない。
ヴァランタン侯爵の農園で収穫される食物や綿花は国全体の約3割を占めるほどなのだ。

「あんた、負けた側の人間のくせにずいぶん偉そうね。ユーフォルビアはうちからしたら飛び地で管理しにくい。領土は取らないでやるけど、あの農園の経営権はそっくりいただくわ。今後、あの農園で収穫されたものは全部うちのもの。輸出する際はリリオぺを通すから、ウィリアムも文句ないでしょ?」
「うちとしては関税さえ払ってもらえれば問題ありません。」
「じゃあ、決まり。早速、あそこに提督を派遣しないとね。言っとくけどベルナール。お前の許可は誰も求めてないから。せいぜい自分の首が飛ばないように、気をつけな。」