シュヴァルツ公の追放が済んだところで、
仕切り直しとばかりにウィリアムは咳払いをする。

「これで最後だが、私から両国に要求することがある。」
ウィリアムはベルナールとユリウスの両名を交互に見つめた。
「ジゼル・フォン・ウルフェニーを正式に私の養女とし、今日よりウィステリア王国ジゼル王女殿下となる。よって、ベルナール国王にはジゼルとの親子関係の一切を破棄していただく。そして、ユリウス国王。貴方にはジゼルとの婚姻そのものを無効としていただきたい。」
ウィリアムからの要求にユリウスは息をのんだ。婚姻を無効とするということは、ユリウスとジゼルが夫婦であったという事実そのものが無くなるということである。

「何かと思えばそんなことですか。もともとあの娘と私の間にそんな関係はあってなかったようなものですから。お好きにどうぞ。」
ベルナールは何とも思っていないようで、あっさりと了承する。
その態度にウィリアムの心はこの男に対する憎悪でいっぱいになった。
「お前のような男に嫁がなければならなかった姉が不憫でなりませんよ。ま、あなたがそんな態度を取っていられるのも今のうちでしょうね。ユーフォルビアでは貴族たちの贅沢三昧に国民の不満が相当溜まっているとか。革命の足音がこちらにも聞こえて来てますよ。(さっさとくたばれ、クソ野郎!)」
ウィリアムの痛烈な言葉にベルナール国王は怒りの眼差しを向ける。
でも言い返すことができない。
実際にヴァランタン侯爵の事件をきっかけに国内では共和制を支持する声が日増しに高まって至るのだ。