君の愛に酔う~藤の下で出会った2人の物語~

「侵攻を計画するからには、目星がついているのですかな?」
ラーデマッハーがローリー卿に問う。
「えぇ、もちろんです。スパイを潜り込ませていたのですが、ようやく尻尾を掴みました。黒幕は、ユーフォルビアでも有数の大規模農園を所有するヴァランタン侯爵です。」
「ヴァランタン侯爵はユーフォルビア王国現王妃の実家だ。王妃の実家が黒幕とは、こちらとしても好都合・・・あぁ、いやいやごめんね。個人的にヴァランタン侯爵家には因縁があるだけだから、気にしないで。」
ウィリアム国王のゾッとするような黒い笑みに、ロートシルトはその執念の深さを垣間見た気がした。

「幸いにも、ヴァランタン侯爵家の所領はウィステリア王国・マグノリア王国それぞれと国境を接しています。我が軍は当然、ウィステリアから国境を越えて進軍するので、あなた方はマグノリア側からお願いします。」
「承知した。ファルツの軍を予め移動させておくよう、私から言っておこう。」
「助かります、中将。陛下、ゲッティンゲン中将の首を取ることとユーフォルビアへの進攻はスピードが命かと思われます。我々もできる限りの準備をしなければ。」
「そうだね。この後すぐに私とヘアフォード公爵はフェアファックス公のところへ行って話をしてくるよ。」
「我々も自軍に帰って、急ぎ体制を整えたいと思います。」
そう言って立ち上がるユリウスにつられて、ロートシルトたちも立ち上がる。
「ではユリウス国王。3日後の早朝に響き渡る教会の鐘の音が、計画実行の合図です。」
「お互いの健闘を祈りましょう。」
ウィリアムとユリウスはがっちりと握手を交わして、会談は終了した。