「騒がしいぞ、お前たち。」
ジョン達の騒ぎを聞きつけて、この野営地のリーダーを務めるキャプテン・エヴァンズが姿を現した。
「あ、キャプテン。お疲れさまです。聞いてください。ジョンのやつが女の子を連れ込んでんすよ。」
「違います！いや、違わないですけど。この女の子、必死さがすごかったので、一度話を聞いてあげるべきかと。いや、もう勝手な判断ですみません！」
騒がしいジョンから目線をずらして、後方の女性に目をやる。
（染粉で染めてはいるが、地毛は赤毛のようだな。マグノリアで迫害を受けたのか？）

「お嬢さん、うちの隊員が勝手なことをしてすまなかった。ここのリーダーを務めるエヴァンズです。」
「ジゼルと言います。」
（ウィステリア語を勉強しておいて良かった・・・）
「ここだと騒がしいので、私のテントにお越しください。」
エヴァンズのテントに通されたジゼルはソファ席を進められた。

「さて、ミス・ジゼル。あなたは何故ウィステリアに来たいのかな？」
「ウィステリアがお母様の祖国だからです。私が生まれたときの名前はジゼル・ド・ウルフェニー。母はエドウィナ・ボーセットです。」
「何だと⁉」
エヴァンズは目の前の少女の告白に驚嘆の声を上げた。
（この子の言っていることは本当なのか？だとしたらこの子はただの少女じゃない。我が主君ウィリアム国王の姪っ子様ではないか。）