「断ったぁー!?」
 驚いたように声を挙げたのは、親友の美香(みか)だ。私は慌てて美香の口を押える。いくら人が少ないとはいえ、教室でこの話をバラまかれたら大変だ。

 美香もしまったというように口を押さえ、ひそひそと声を潜めながら話を続けた。
「うそでしょ、夏樹(なつき)くんって言ったら、テニス部の元部長じゃん! えー! 狙ってた子いっぱいいるんだよ、もったいない!」
「無理無理、私は、そういうのいいもん」
「のんちゃんはさあ、顔もかわいいし頭もいいじゃん。なんでそれでパートナー作んないのかなって、告白されたことない私は思うわけよ」


 中学三年生の三月中旬。もう受験組もあらかた落ち着いて、短縮授業ばっかりだ。
 あとは卒業を待つばかりのこの時期を見計(みはか)らって、周囲では告白ラッシュが続いている。もれなく私もそれに巻き込まれたわけなんだけど……。

「だって、私、二次元にしか興味ないから……」
「でた。それそれ、ほんと意味わかんない」

 美香はふてくされた顔で机に突っ伏した。