別に俺自身、八代瑛茉のことが嫌いなわけではない。むしろ今まで俺がしてきたSAISONメンバーのスケジュール管理をしてくれているし感謝すらしている。

でも、自分自身を任せようと思えるほど彼女のことを知らないし、信頼していないのもまた事実。

さて、有羽になんて返信しようか?

そう迷っていた矢先。

「翔兎くーん。そろそろ出番だよ〜」

楽屋の入り口が開き、スタッフさんから声がかかった。

「…はい!行きます!」

俺はスマホを急いで鞄に戻し、スタッフの後ろについていく。

今日の仕事は、とある学園ドラマのちょい役。セリフも3つしかない。

ただ、俺はこの撮影を数週間前から楽しみにしていた。

撮影現場が近づくに連れ、ドキドキと高鳴る鼓動。

そして、現場に足を踏み入れた瞬間に空気が変わるのを感じた。

「はい。次シーン23、玲央くん、さっきのセリフからお願いねー」

「了解です!」

監督の指示に笑顔で手を振る彼、このドラマの主役を演じる高木玲央さん。