これ以上みっともなくなってどうするの、私。


せめて見た目くらいは普通を保ってないとダメでしょ。


ポケットからハンカチを取り出そうと身じろぎしたとき。


カサリと、紙袋が音を立てた。


袋の中には丁寧にラッピングした箱が入っている。


「今年が一番上手くできたのにな……」


恋心を自覚してから毎年作っていたチョコ。


初めて作ったときはへたくそで、(いびつ)な形をしていた。


ラッピングだって不格好だった。


それがだんだんと作るのに慣れてきて、味も見た目も上出来になって。


溶かして固めるだけと言っても、温度に気をつけたりデコレーションに()ったりで、意外と難しかったりする。


渡せないのに作るから、毎年にきびができないか警戒しつつ完食までがお決まり。


今年は気合いを入れて、生チョコとトリュフの詰め合わせにしてみた。


あとは渡すだけだったのに、これもまた私のものになってしまったけれど。