「ここにいたら、ダメだ」


ただ、やっぱりどうしても“友チョコ”だなんて嘘はつきたくないから。


『彼女持ちにあげるチョコはない』


動揺で指先を震わせながら送ったメッセージ。


すぐに既読のマークがついた。


返事はこない。


もしかしたら、とっくにこっちへ向かってるかもしれない。


だとしたら、あいつが来る前にここから出ないと。


泣いてるところを見られようものなら、きっと心配させてしまう。


弱ってる幼なじみを放っておけない、そういう男だもん。


せっかく初めての彼女と帰るチャンスなのに、それを邪魔したくない。


だから、私は。


『せいぜい幸せになるんだよ、ばーか』


言い方の可愛くない本音を送って、すぐさま教室を飛び出した。