……こいつはこれ以上、私の心臓をいためつけて、どうしたいんだろう。
そろそろやめてくれないと、幸せすぎて苦しくなってしまう。
息もできないくらいにドキドキして、窒息しそう。
緩やかに手の力が抜けていき、カツンと。
手に持っていた箱が床へ角を下ろしたとき。
「残りのチョコ、ちょうだい」
飢えてる獣が素早く反応した。
食べさせてもらう気満々で口を開いている。
あーんなんてするわけないじゃん……。
恥ずかしくて無理に決まってる。
「自分で食べれば」
「さっきは食べさせてくれたのに」
「あれはあんたが無理やり……!」
「はやく」
拒否権はないみたいに急かされる。
だけど、指図されればされるほどに反抗したくなるのが私の面倒な性格なわけで。
「暴君にあげるチョコはない」
つまんだチョコを今度こそ自分の口へ入れた。



