嬉しいような、恥ずかしいような。
ついつい口から出るのはひねくれた言葉で。
「……バカだって思ってるんだ」
やつの手から逃げるように顔を背けた。
すると、今度は顔を両手でがっちりと挟まれ、元の位置に戻される。
それから、私の顔を見て深いため息をついた。
「うん、バカ。彼女がいるなんて変な勘違いもしてるし」
「勘違い……?」
「どうせ覗き見してたんだろうけど。あの子は俺の彼女じゃない」
「え?」
『私の顔はため息をつきたくなるほどに残念か』
そんな喧嘩を売るためのセリフは喉元で止まり、代わりに出たのは間抜けな声。
思考が止まる私を正面から見つめる目はいつになく真剣で、その瞳に反応して心臓だけが過剰に働いている。



