「胡桃も一緒に病院いく」
「いいよ、先輩帰っちゃうよ。わたしは大丈夫だから先輩にチョコ渡してきなよ」
放課後まで胡桃ちゃんはわたしから離れようとしなかった。
今だって今生の別れのようにぼろぼろと涙を流している。
「ねー泣かないで。明日には治ってるかもだし、わたし基本横向きで寝るしさ、大丈夫だよ」
「……ほんと?」
「わたしが胡桃ちゃんに嘘ついたことある?」
「……ない、かも。えっ、ない。そういえば一回もない。怖い」
「でしょ?だから、ね。ほんとに大丈夫だから。それよりも先輩とどうなったか、明日いっぱい聞かせてよ」
わたしが明日という単語をすんなり出せば、予想通り胡桃ちゃんはほんの少し表情をやわらげてくれた。
「わかった。じゃあまた明日ね、約束よ」
「うん、また明日。がんばれ胡桃ちゃん」
……ごめんね胡桃ちゃん。
その後ろ姿が見えなくなったとたん、笑顔がするすると引っ込んでいく。
わたしだけが残された教室には。
「もしかしたら嘘になっちゃうかも」
ひっく、ひっくと間抜けな音だけが響いていた。



