「まあ結果、月音には大変なことを背負わせてしまうことになったけど……」

「月音ちゃんは一度碧人様をボコにしていいと思うよ」

「よし。気合入れよ」

ぐるん、と月音が腕を回した。

「ちょっと待ちなさい娘と婿。私に全面的に非があるのは認める。でもなんでそうなる」

「反抗期」

「誰もが通る道ですね」

「……仲いいな」

碧人が目を皿のようにして、前に月音が言ったセリフを口にする。

本当によく似た親子だ。

「それで父様、私は二度と血を使うな、ということでよろしいのですね?」

「……ああ」

碧人は渋い顔でうなずいた。

「華音の血を継いでいるからそのような効力の血だろうと思っていたけど……まさかお前もそういう趣味になっていたとは……父は無念だ……」

悔しそうに目頭を押さえる父を見て、月音は慌てた。

「ご、誤解ですっ。私はあやかし消すのが趣味とかじゃないですよっ。やばげなときとかこうして切り抜けてきただけで――」

娘の言葉を聞いて、碧人は一喝した。

「やばげなときがあるんなら父に言いなさい! 護符だけじゃ足りなかったか!?」

「あのー、仕事的な話は大通りでは控えた方がいいと思いますよ?」

煌に言われて、親子がはっとした。

そう、ここは人通りもある大通り。

あまりそういう話をするのも、聞かれるのもよくないはずだ。

煌の提言で場所を思い出したのか、碧人が謝ってきた。

「す、すまなかった煌くん」

「いえ……」

「ごめんね、小田切くん」

「とりあえず落ち着こうね」

煌が諭すと、碧人が大真面目な顔で煌を見てきた。

「ついては早めに婿に来てもらえると助かるのだけど」