「はあ……はあ……」

月音が逃げてきたのは、図書室棟への渡り廊下だった。

「だ、大丈夫……? 月音ちゃん……」

恐る恐ると声をかけてきた煌に向かってギンと目を見開き、月音は絶叫した。

「な、な、何あれ―――――!」

「あ、だよね……」

煌は月音が混乱しているとわかっていたのか、糸目になる。

「百合緋様を巡る争いを期待してたのに争われるの白桜様なの!? 男色は気にしないけど黒藤様×白桜様が爆誕してしまうの……!? うおおおおお!」

「月音ちゃん、前から言おうと思ってたんだけど、女子高生の悲鳴が『うおおお』はどうかと思うよ……? あともうちょっと静かにしよう?」

煌が落ち着かせようとするので、月音は大きく深呼吸をした。

「ふー、ふー」

「今から戦闘に行く人みたいにたぎらないで。まあ、俺も正直驚いたけど……」

月御門と水旧ってデキてると思ってたし……と付け加える煌の両手を、月音はガシッとつかんだ。

煌の両肩がびくっと跳ねる。

「だよね! 白桜様と百合緋様って学園公認なとこあったよね!? これは三角関係が勃発してしまうの……!? うおお……じゃない! わあああ! どうしよう! どこに注目してればいいんだろう!」

顔を真っ赤にさせながら思いのたけを吐露する月音。

悲鳴は煌の指摘を受けて変えることにしたらしい。

そしてどうあっても白桜たちに注目し続けるらしい。

「……あのさ、もし月御門が影小路先輩を選んだら、月音ちゃんは推しを変えるの?」

「否! 私の推しは白桜様と百合緋様! 黒藤様という推しが増えることはあっても白桜様×百合緋様を推していく所存! でも黒藤様が選ばれても文句はないし最推しの白桜様が想われる方と結ばれるのが一番だと思っている!」

「……オタク?」

小首をかしげる煌。月音は大きくうなずいた。

「そうだね! 何オタクか私にもわかんないけど、たぶん私はオタクだ!」

あまりに堂々と宣言されて、煌はどこからツッコめばいいかわからない。

「つーてもさっきの人が本当に影小路先輩なのかな……」