君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい

「それで結局どうしたの?」とまだ少しだけ笑いを含みながら聞いてきた。

「…………」

無言の私に対してん?と小首を傾げながらふんわりとした笑顔を向けてくれている。

「………ない」

「ん…?ごめん、聞こえなくて」と端正な顔がさっきよりも近付いてきた。

それだけのことなのに私の心臓の音はバクバクとうるさくて、胸がいっぱいになる。

「す…水族館のチケットが今ちょうど2枚あってその、一緒に行かない…?」

我ながらおかしな誘い方だ。

ちょうど二枚あるから、なんて意味のわからない理由を言っているのは自分でも分かっている。

暖の顔を見るとやっぱり驚いた顔をしていて。
そりゃそうなるよな…と自分の言ったことを後悔する。

断られることを承知の上で覚悟を決めていると、声が聞こえた。

「いいよ」

「え?今なんて…」
今のは聞き間違いだろうか。

「いいよ、行こっか。冷と一緒に水族館楽しみ」
暖は柔らかい笑みを浮かべながら、嬉しそうな声でそう言ってくれた。

思ってもみなかった答えに、私の心臓はそろそろ耐えきれなさそうだ。暖と二人で水族館…想像すると思わず顔が緩んでしまう。

今の顔は絶対に誰にも見られたくないなと思う。

きっと今までで一番ニヤついてる気がする。

声にはださなかったけれど、私の心の中は静かな喜びが水のように満ち溢れていた。


私だけじゃきっと暖を誘おうなんて思えなかった。

それに一人だけで決意を固めても途中でやっぱりやめておこう…と諦めているだろうと想像がつく。

チカに言ってしまったからには誘うしかないと思っていたのだ。そう思うとただプライドが高いだけなのかもしれない。

「…うれしい」

暖が「なんか言った?」とこちらを振り向くが「ううん、なんでもないよ」と返した。