君と過ごした世界は、どうしようもなく暖かい

私は目が覚めてもまだ、胸がつぶされるような悲しみがへばりついているようだった。

なぜかこれは夢というより昔あった出来事を見ているような、そんな気分だ。

幼い頃のことなんて皆そこまで覚えてはいない。
だから私もそれと同じように偶然何かを忘れているだけだと思っていた。

けれどこんなにもリアルで、苦しい夢を見るとそうは思えなかった。

今日は休日だ。お父さんに明日のこと、そして幼い頃の話を聞いてみよう。

「…おはよ」
下に降りるとお父さんはもう起きていて「おー、おはよう」と返しながらコーヒーを飲んでいた。

「明日、水族館行ってくるね」
私がそう言うとお父さんがなぜかコーヒーを吹き出しそうになっていた。

「ごほっ…」
「え…どうしたのお父さん、大丈夫?」
「す、水族館って、まさか冷彼氏と行くのか…?」

その言葉に次は私が飲んでいた水を思わず吹き出しそうになる。
お父さんと同じようにげほげほと咳き込んでしまう。

「そ…そういうんじゃないから!!友達だよ、何言ってんの」

嘘はついていないはずだ。暖は男の子だとしても友達だし付き合っている訳でもない。

私の反応に不満があるのか「そうか…」と言いながらも落ち着いていないのが分かる。

その空間にいてもたってもいられず、私はもう一つの話題をだした。

「あっ…そういえばさ、突然なんだけど私って小さい頃どんなだった?」

お父さんは突然の質問に驚いていたがうーんと頭を悩ませてから返した。

「そうだな…何というか子供らしさがなかったかもな。まだ小さいのに、我慢ができてしっかりしてる子だったよ」

そう言うお父さんは懐かしみながらも少しやるせなさを感じるような表情だった。