数ヶ月前、米は、花梨女子大学で週に一度有志が集って開く「夜間学級」で教えることになっていた。つまり、教師の卵だった。この教室は、米が所属するボランティアサークルの中でも、教員免許取得をめざす学生たちが代々引き継いでいる。この「学級」は、大学から許可をもらった正式なものではないのだが、学生としては学んだ教授法を教育実習以外に生かせる場として、また通ってくる「生徒」たちにとっては、年々減少していく公的な夜間中学の代わりに、手頃な料金で通えて、若い学生や年配の者同士で交流の出来るちょっとしたカルチャースクールのようなものとして、まだまだ需要があるのだ。
米は、国文学を専攻しており、教員免許も取得する予定だった。そして、今年はいよいよ教員採用試験に挑む。最近の倍率は非常に高く、難度の高い試験だが、彼女は「ボランティア夜間学級てらこや」の運営にも拘わりながら、地道に試験勉強を続けてきた。そして、教育実習を終えて手応えを感じた今、彼女はこれまで裏方として関わってきた「てらこや」で実際に教鞭を執ることにしたのだった。