そんなことを思いながら、私は出してもらったクッキーをかじる。
……衝撃が走った。
「おいしい……!」
サクッとしているのに、口に入った瞬間ジュワっと溶ける。
口に残るのは、優しいバターの香りと、チョコチップの食感。
チョコチップが甘い分、クッキー本体は甘さが控えめでバランスが良い。甘さが控えめというか、ほろ苦さもあって。これは……
「コーヒーの味」
「あ、正解!」
「本当に美味しい!これ、どこで買ったんですか!?高いやつですよね!?」
「そんなことないよ、手作りだから」
こともなげに言う在花さんに、私は思わず固まる。
「つくった……?」
「うん」
「このクッキーを?」
「うん」
「……パティシエの方?」
「そ、そんな大袈裟な」
在花さんは顔を赤らめながら、ぶんぶん両手を振る。
だって、そんなわけがない。
お母さんがたまにお菓子を作ってくれることがあったけど、家庭で作るお菓子というのは、何かパサパサして粉っぽいものというイメージが強い。



